2012年9月19日水曜日

学会参加報告書(小林幸次、博士後期3年生)

報告者氏名:小林幸次
研究会名:第67回日本体力医学会
会場:長良川国際会議場・岐阜都ホテル
日程:2012/9/14~2012/9/16
発表日:2012/9/14
題目:筋収縮形態の違いがMAPKシグナル伝達経路の活性化に与える影響
著者:小林幸次、小笠原理紀、蔦木新、李基、鴻崎香里奈、中里浩一
収録:第67回 日本体力医学会大会 予稿集 p208

<研究集会の詳細>
今回私が参加したのは日本体力医学会が主催する第67回日本体力医学会大会です。平成24914~16日の3日間、岐阜県の長良川国際会議場・岐阜都ホテルで行われました。「体力並びにスポーツ医科学に関する研究の進歩、発展を促進し、研究の連絡協力と、その成果の活用を図る」ことを目標に、毎年、国体の開催される都道府県で国体とほぼ同時期に開催されます。現在では会員数が5000名を超え、体力・スポーツ医学に関する国内最大規模の学会です。

<発表の概要>
発表について
今回、以下の内容でポスター発表をしました。
【背景】骨格筋への機械的刺激はタンパク質合成を高め、骨格筋を肥大させる。特に、伸張性収縮による筋への刺激は、他の筋収縮形態に比べタンパク質合成およびそれに関わる細胞内シグナル伝達経路(Akt/mTOR/p70s6k経路, MAPK経路)のタンパク質分子のリン酸化を亢進させる (Moore DR et al. 2005, Burry M et al. 2007, Boppart MD et al. 1999)。これらの報告からも、これまで伸張性収縮による筋への刺激は筋肥大に有効であると考えられてきた。しかしながら、近年、異なる筋収縮形態(短縮性収縮 vs. 伸張性収縮)で長期的にトレーニングをしたとしても、トレーニング量を揃えれば筋収縮形態に関わらず筋サイズの増加は同程度であることが確認された(Moore DR et al. 2012) これまで、筋収縮形態の違いによる骨格筋への刺激がタンパク質合成に関わる細胞内シグナル伝達分子のリン酸化の亢進に与える影響について検討されてはいるものの、その際のトレーニング強度や量の変化がどの程度それらのリン酸化の亢進に影響を及ぼすのかについてはまだ詳細に検討されていない。特に、MAPK経路に関しては詳細な知見は見当たらない。【目的】筋収縮形態の違いがタンパク質合成関連細胞内シグナル伝達分子のリン酸化の亢進に与える影響、さらにはその時のトレーニングの強度・量の変化がリン酸化の亢進にどの程度影響しているのかについて検討する。【方法】対象は雄性SD系ラット(n=46)とし、皮膚電気刺激をラット右脚下腿三頭筋に与え足関節を伸張性収縮または等尺性収縮させるトレーニングを実施した。群分けは、等尺性収縮トレーニング群(ISO)(各セット5回刺激)、伸張性収縮トレーニング群(ECC)(各セット5回刺激)、等尺性収縮トレーニングHigh Volume (ISOHV)(刺激回数を増やしてトレーニング量をECCに合わせる)、伸張性収縮トレーニングLow Volume (ECCLV)(刺激強度を落としてトレーニング量をISOに合わせる。各セット5回刺激)の4群とした。なお、左脚はコントロール脚とした。分析には外側腓腹筋を用い、トレーニング終了直後、3時間後に解剖しサンプルを採取した。測定項目はリン酸化p70s6k(Thr389)S6rp(Ser240/244)Erk1/2(Thr202/204)p38(Thr180/Tyr182)とし、コントロール脚に対するトレーニング脚の測定値を比較した。【結果】筋収縮形態、トレーニング量およびトレーニング強度に関わらず、トレーニング直後のリン酸化Erk1/2p38の亢進が確認された。また、リン酸化p38Erk1/2は強度依存的に亢進することが示された。しかし、リン酸化Erk1/2の亢進は、ECCECCLVよりもISOISOHVのほうが持続する傾向が示された。ECCISOHVのリン酸化p70s6kの亢進は、トレーニング3時間後で直後よりも有意に増加していたことからAkt/mTOR/p70s6k経路の活性化にはトレーニング量が重要であることが示唆された。これらのことから、MAPK経路の活性化にはトレーニング強度が重要な役割を果たしており、発揮張力が大きくなる伸張性収縮による刺激が有効であることが確認された。

<質疑応答>
本発表に対して、1時間の質疑応答の時間が設けられており、以下のような質問をしていただきました。
Q. MAPKの筋肥大に関わる貢献度はどの程度か?
A. どの程度関わっているかはっきりとは分かりませんが、MAPK経路のリン酸化は転写因子のリン酸化の促進、タンパク質合成の調節をすることがこれまで報告されています(Cano E and Mahadevan 1995, Cobb MH and Goldsmith EJ 1995, Hill CS and Treisman R 1995)
Q. ラットに対してどのようにトレーニングをしているのか?
A. 我々の研究室で使用しているラットトレーニング装置を用いました。麻酔下のラットの下腿三頭筋に心電図用の電極を張り、電流を流すことによって筋を収縮させます。
Q.  伸張性収縮トレーニングはどのようにやるのか?
A.  トレーニング時に足関節をプレートで固定し、張力発揮時に足関節が背屈するようにプレートを動かして伸張性収縮を引き起こします。また、プレートを動かさなければ等尺性収縮でのトレーニングとなります。
<感想>
 今回はポスター発表という形で発表をさせていただき、多くの先生方から質問をしていただきました。また、同年代の大学院生や研究者の方々の研究発表を聞いたり、意見交換をすることができ非常に充実した3日間となりました。しかし、同様の研究をしている研究者が国内にあまりいないことからか、発表内容に対するアドバイスやご指摘をあまりしていただけなかったことが残念でした。来年も発表ができるよう今後も実験に取り組んでいきたいと思います。
 <謝辞>
 今回の学会参加に向けて指導教員である中里浩一先生をはじめ、研究室の蔦木新さん、李基さん、鴻崎香里奈さんからご指導ご協力をいただきましたことを深く感謝いたします。また、学会参加に際して、スポーツ医学研究室の平沼憲治先生、平沼研究室の高橋仁さん、佐々木さはらさんより多大なるご指導ご鞭撻をいただきましたことを感謝いたします。

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